TEL:03-5795-1112
アトピー性皮膚炎は、日本皮膚科学会で「アトピー性皮膚炎の定義・診断基準」が作成されており、それに基づいて診断されます。
それによると、「増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ(アトピー性皮膚炎診療ガイドラインより)」と定義されています。つまり、「かゆみのある湿疹」「よくなったり悪くなったりを繰り返す」「アトピー素因を持つ」という3つがアトピー性皮膚炎の特徴といえるでしょう。
このなかでアトピー素因とは何でしょうか。アトピー素因とは、(1)本人または家族が、アレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ぜんそく、結膜炎など)を持っていること、(2)アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていることをいいます。
つまりアトピー素因とは「アレルギーを起こしやすい体質」と考えるといいでしょう。
アトピー性皮膚炎の原因はまだ明らかではありませんが、皮膚のバリア機能の低下と、上記で説明したアトピー素因が原因の一つと考えられています。
アトピー性皮膚炎の皮膚では、外部からの異物の侵入を防ぐバリア機能が低下し、皮膚への刺激やアレルギーによる皮膚炎をおこしやすくなっています。
皮膚炎によるかゆみのため皮膚が傷つくと、さらに炎症は悪化します。この時、皮膚の内部では正常の皮膚と違った細胞が増えてきます。正常ではTh1細胞といわれる免疫細胞とTh2細胞といわれる免疫細胞がバランスよく分布していますが、アトピー性皮膚炎の皮膚ではTh2細胞が増えた状態になっています。そしてTh2細胞が産生する「IL(インターロイキン)-4」と「IL-13」という物質(サイトカイン)は炎症を起こしたり、かゆみを誘発したり、皮膚の水分保持やバリア機能に大切なフィラグリンという物質の発現を低下させたりします。
アトピー性皮膚炎の治療は、基本的にステロイド軟膏あるいはタクロリムス軟膏による外用療法が基本ですが、近年前述した「IL-4」と「IL-13」をコントロールするデュピルマブ(商品名:デュピクセント)という薬剤が開発され、既存の治療で効かなかったアトピー性皮膚炎に対しても大きな効果が確認されています。米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)でもこの薬剤をブレークスルーテラピー(画期的治療薬)に指定しています。今後も皮膚の免疫を整える外用剤・注射薬が次々と開発中であり、アトピー性皮膚炎の治療は大きく進歩しつつあるといえます。